ヒメウズラにとって大切なおはなし
私はこれまでヒメウズラを2羽看取っています。
そしてその逆に、人に飼育されないと生きて行けない鳥を産ませるのも、今となっては私の仕事であるわけで…。
だからこそ書き残さなくてはいけない事があると思い、今回はヒメウズラにとって大切なお話を綴ろうかと思います。
看取ったうちの一羽は殆ど羽の抜けた状態で引き取った「れん(蓮♂)」と名付けたヒメウズラ。
「れん(蓮♂)」がどんな状態ではなぶさ堂に来たかは、過去の記事に目を通していただけると解ってもらえるかと思うのですが、一時期は回復をして元気に遊びまわっていました、でも「れん(蓮♂)」は体も弱く、夏場でも状態によっては保温が必要な子でした。
決して人に慣れて居る子では無かったけど、温めた手のひらの中ではコロンとしてくれたり、朝は大きな声で他の子に負けじと雄叫びをあげていました。
だけど、「れん(蓮♂)」は足に病気を患っていたせいもあってか、遊び疲れて小動物用のヒーターの上ですぐに眠ってしまったり、手の中でもウトウトとする事が多かったのです。
ある晩の事、れん♂を抱っこして居ると、足や首にいつもよりも力が入らなくなっている様に感じました。
ご飯はしっかり食べていたのだけど、やっぱり病気の足にかかる負担がそのまま体力を奪ってしまって居た様に思いました、体重も日に日に減って行きました。
そして数日後「れん(蓮♂)」は私の手の中に収まっていた夜に静かに静かに息を引き取りました…。
「れん(蓮♂)」との時間はとてもとても短い時間でしたけど、猛禽類の餌になる寸前だったこの子を私は引き取って、結果、上手く育ててやることは出来なかったのはとても残念だけれども、最後まで看取ってあげる事ができた事は本当に良かったと思っています。
そして、もう一羽。
はなぶさ堂のヒメウズラの中では一番長い付き合いだった「うずまきさん(渦巻♀)」が、つい先日旅たちました…。
本当は、この記事を書こうと決めた時には「うずまきさん(渦巻♀)」はまだ元気にしていたのだけど、最後の時は突然訪れました。
昨年5月の事、うずまきさん♀は病院に通う様になりました。
通院の訳は卵管がお尻から出てしまうと言う大変な病気でした。
鳥のメスには「卵詰まり」と言う症状が有りますけど、その場合とは逆に発情しつつも産みたい卵が体内に作られない状態、軟卵を産みやすい子には要注意の病気です。
うずまきさん♀は病気になる前まではよく太っていました、体重は67gくらいあって少し太って居たけど、この子にはそれくらいがちょうど良いかと考えていました。
当時は「ウズラなのだから卵を生んで当たり前」という大きな勘違いを持って居ましたが、うずまきさん♀は軟卵を生んでしまう事も何度かあったので、ボレー粉やインコ用のペレットなどを使ってカルシウムの維持にはとても気をつけていました。
それでも鳥という生き物は自分の骨のカルシウムまでをすり減らして卵を生成するのですから、ちょっとのカルシウム摂取ではとても足りません。
そして何より、人が愛情をかければかけるほど発情をしてしまうのも、飼い鳥として生まれてきてしまった子たちの宿命なのかもしれません…。
相手が人であっても、発情をさせることは卵を産ませる事に繋がります。
うずまきさん♀のお尻の辺り、ちょびっと赤いものが見えるでしょ?
これが卵管が出てしまって居た状態なのですが、写真はこの距離に留めさせてくださいね。
実際に目で見ると真っ赤な血の塊、例えるなら「へその緒」みたいなものがお尻から出てきて居る様に見えました。
そして、この日も軟卵(卵の黄身だけの様な、或いは糞とも思える様なもの)が卵管の先っちょに付着していていました。
(※写真はそれがポロリと落ちた状態です)
私は慌てて朝のうちに病院に電話をして、一番早く予約の取れた午後一番のタイミングで病院に連れて行きました。
しかし、午後の時点で突出した卵管は乾ききってしまっていて、病院では緊急手術を受ける事態となりました…。
手術はカラカラに乾いた部分の卵管を切除して、お尻から卵管を体内に戻して、肛門を一糸縫うという手術。
当然術後は入院2週間ほど、毎日電話で状態の確認を取りつつ、退院後も通院と投薬は続きました。
参考までに、手術には4万円くらい掛かりました。
退院後はうずまきさん♀の体重を毎日測って、うずまきさん♀のベストコンディションを探しました。
体重を図るということは、卵を産ませない事にも繋がります。
ヒメウズラは体重が重くなると卵を産みますから、毎日の体重管理がうずまきさん♀を長生きさせるための必須項目となりました。
ウズラなのだから卵を生んで当然と思われがちで、私もそう思って居たのですが、うずまきさん♀の場合、卵管は飛び出さなくなったものの、今後卵を産ませるという事はとてもとても危険な行為となりました。
それからというもの、少しづつ元気を取り戻してきたうずまきさん♀ですが、日に日に体重は減って行きました。
ただ、うずまきさんの場合は「れん(蓮♂)」の場合と違って少しずつ体重を絞って行ったのです。
この時で体重は59g。
お医者さんからはそれくらいがちょうど良いと言われていたのだけど、ヒメウズラの体重というのは、朝と夜でも3〜4gも変動する場合があります。
糞が他の鳥に比べて大きいという事と、なんでもたくさん食べて水もたくさん飲む習性があるので、体重維持はとても難しいです。
ヒメウズラの女の子はだいたい、65gを越えるくらいで卵を産む子が多いですが、個体差は大いにあります。
そして逆に体重が減ると、今度は関羽が始まって羽が抜けるとまた体重が減ります。
うずまきさん♀の最終的なベスト体重は52~55gで卵も産まず元気を保っていました。
因みに、体重管理には餌を個別に与え、一日の食事の量を測って与える様にしています。
与える量は体重に応じてですが、ボレー粉はあくまでも副食として、主食は一日に5g〜7g程度を目安にしています。
※寒い時期の鳥はよく食べるので上記に限らず10g程度与える場合もあります。
ひよこの餌、中雛、インコ用ペレットはどれも主食として使えますが、総合面ではインコ用のペレットがカルシウムも豊富で、人工飼料ではありますけど一番バランスが良いです。
ひよこの餌や中雛をあげる場合にはボレー粉は必須で与えた方が良いです。
はなぶさ堂ではずっと中雛を与えて来ましたが、若い内には副食にお豆腐やミールワーム等もふんだんに与えていました。
ただ、大人になってからあんまり高タンパクなものを与えると太りやすいかとお思いますので、副食は野菜中心に考えた方が良いでしょう。
- 中雛:魚粉が入っているのでツンとする匂いがあります。ヒメウズラに適した飼料ではありますがカルシウムの面ではボレー粉などを与える必要があります。
- ひよこの餌:こちらにも魚粉が入っていますが匂いは少なめ、パウダーより若干固形の方が良いかと思います、中雛に比べ糞の状態や匂いも良好になります。人工飼料と穀物餌の中間といった感じですが、カルシウム面では卵をうむ子にはぜんぜん足りないと思います。
- インコ用ペレット:鳥にとっての栄養分やカルシウムが計算されて居ますので、むやみにボレー粉を与えすぎるよりペレット一本という方法も良いかと思います。一番のおすすめですが高価です…。
- ボレー粉(牡蠣殻):ヒメウズラに限らず、小鳥のカルシウムとしては一般的なので与えて当然かと思いますが、ボレー粉も与えすぎると太ります…。塩分が多いものもあるので、熱湯で煮沸してから与えると良いです。
補足として、稗や粟などの穀物系の粒餌もヒメウズラは好んで食べますが、私の経験上は軟卵を産みやすくなるように思って居ます。特に粟玉は発情を促すと言いますけど、栄養分も少なくて卵をたくさん産みたがるヒメウズラには不向きだと思いますが、病中等にはむき粟を擦り潰して食べさせる事もあります。
5gが掬えるスプーンに主食一杯とボレー粉などを添えて一日のご飯として与えます。
たったこれだけ?とお思いになる方もいるかもしれませんが、毎日決まった量を与えているとその子のベスト体重が見えてきます。
はなぶさ堂のヒメウズラたちだけでも体重に個体差があるので参考までに、ここ数ヶ月の体重の平均値を紹介しておきますね。
「うりの(瓜乃♂)」平均体重47~50g
男の子は女の子に比べて体もシャープなので体重も軽いです。(※個体差はあります。)
細身でも女の子に合わせた途端に発情開始…(汗)、男の子の場合は体重に関係なく常に求愛をしたがるのです。
男の子でもカルシウム摂取は必須、不足すると嘴が欠けたり、爪が柔らかくなって反ってしまうなどという事も起こります。
「ちよまる(千代丸♀)」平均体重59~61g
はなぶさ堂では一番重いのですが、与えれば与えるだけ食べて、食べれば卵もたくさん産む子です。この体重で管理できているうちは卵を産まずに居ますけど、65g近くになれば毎日でも卵を産みます。
そして誰よりも人懐っこいのですが、それによって発情してお尻の穴が膨らんだり紅潮する様なこともあまりない状態をキープして居ます。
「わさ(和佐♀)」平均体重53~56g
もう少し太っても良さそうなので、他の子達より少し多めの食事をとって居ます。
「うい(憂♂)」平均体重:45~47g
うい♂は生まれつき体が小さいので、お父さんのうりのよりも軽いです。
食欲は旺盛だけど、5gですら残す事もありますが、体重は常に安定して居ます。
「あんよ(杏世♀)」平均体重:42~45g
以前から読んでくださっている方の中には、あんよ♀の事を知っている方もいるかと思いますが、幼い頃に親鳥に足をついばまれて以来、指は欠損し股外れの状態で今も尚元気に成長して居ます。
あんよ♀は這う様にして歩くことしかできないのですが、こう見えて卵を産むことができます。
体重は軽いですが足の事もあるので体重は軽くてちょうど良いかと思って居ます。
他の子達と違って運動もあまりできませんから、あんよ♀が卵を産むときは健康状態も良好な時と判断して居ます。
因みにあんよ♀はこの体重でも月に1〜2個の卵を産みます。
そして、あんよ♀には特別な環境を作ってあげているのですが、どうしても弱い部分もあって、一度「鼻腔炎」にかかった事もありました、栄養が行き渡らないせいか鼻コブが柔らかくなって鼻腔が塞がる症状に陥ったのですが、コブはかさぶたの様になってポロリと落ちてしまったのです、鼻コブは綺麗に再生はしない様ですが呼吸には心配もなく、毎日呼び鳴きの声が一番大きい元気っ子です。
川越に引っ越してきて、うずまきさん♀と一緒に撮った最後の写真。
うずまきさん♀は4羽の子宝に恵まれて、抱卵も自分でできた偉いお母さんでした。
あんよ♀の足は突いちゃったけどね…。
でもお母さん、あんよ♀は元気です!。
ヒナから育てたうずまきさん♀との思い出はたくさんたくさんあり過ぎて、今こうしてブログを書いて居ても涙が止まらないのです…。
うずまきさん♀は旅発つ前に保温された隔離箱の中で一気に羽が抜けました、老衰で一気に体重が減って換羽が伴った様にも見えましたが、ふかふかのたくさんの羽に包まれたお布団で、足を伸ばしてゆっくりとゆっくりと横たわる様にして永遠の眠りにつきました…。
うずまきさん♀、享年3年と1ヶ月。たくさんの“ありがとう”をくれました。
ヒメウズラの寿命は3年程度という人も居ますけど、私はヒメウズラの寿命はもっと長いものだと思います。
飼育する人間の側にもっともっと知識があれば、それは愛情という形で補う事ができるからです。
とても愛嬌のある子だった「うずまきさん♀」、こうして秤に乗って「体重管理は大切よ!」って言ってくれているみたいです。
最近はヒメウズラを飼育される方も増えて、ペットショップでもたまに見かける程ですが、他の鳥に比べ飼育本なども少なく、まだまだ情報も少ないのが現状です。
文鳥などと同じ様にヒメウズラの女の子も卵を産ませ過ぎれば寿命に繋がります。
ヒメウズラにとって大切なおはなし、
私の書いたことは経験でしかありませんが、少なからずこれからヒメウズラを飼育しようと考えている方、ヒメウズラを飼育されている方々の参考になれば幸いです。
いつも読んでくださる皆さま、ありがとうございます。
さて、次回のお話は…。
ちょびっとおちりの赤い羽根が可愛い、このヒナなんのヒナ?
そうダイヤモンドフィンチのヒナです。
この秋、はなぶさ堂でダイヤモンドフィンチのヒナが孵りました。
次回はダイヤモンドフィンチの親鳥の事も交えながら、生まれてくるヒナたちのお話を綴ろうと思います。
不定期更新ですが、ブリーダー業務の傍ら細々と続けてまいりますので、次回もどうぞお楽しみに(^-^)/。
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